工務店応援記―道は開ける

1、厳しい住宅環境

 今、日本の工務店は厳しい環境におかれている。住宅不況がやってきていて、苦戦を余儀なくされている。

まじめに取り組んでいても、受注ダウンになったり、利益が減少したりしている。

そのためこの激風を乗り切ってもらいたく、各地で頑張っている地場工務店を応援し、少しでも改善に役立ってもらいたいとの思いで工務店の応援記を書く。

2、地域特性をいかした住宅

 地域の気候風土や文化をよく理解する地場の工務店が頑張らないと、日本の住宅はおかしくなってしまう。

充分に役割は果たしているが、工業化された住宅や、いわゆるローコスト住宅では日本の文化を発展させることはできない。

仕事柄、日本全国を回るが各地で無国籍住宅とでもいうべき住宅が建っている。

どこの県に来たのかわからないくらい特長がないものが多い。寂しく思うものである。


 日本は狭いといっても北海道から九州・沖縄まで気候風土はまったく違う。

当然文化も微妙に異なっている。

だから住宅も違ってよいのだが、どこに行っても北海道を除けば、みな同じである。

器としての住宅の性能だけが評価され、使う材料も同じで、デザインも同じで特徴がなく、味気がない住宅ばかりで感動はない。

もう少し地域特性や文化を反映した住宅があってもよいのではないかと思う。


 その中でしっかり地方の特性や文化を理解し、地産地消など、それをしっかり反映しながら住宅としての必要機能をもりこんだ素晴しい住宅を建てている工務店がある。

これを見るとほっとする。

またこのような住宅に住んでいる人々は幸せだと思う。

3、本物の住宅づくり

 今の住宅は性能・機能ばかりで、人間の持つ微妙な感性をも否定するかのごとく安らぎがない。

自然科学ばかりでなく、もっと広い範疇での住宅をとらえるべきである。

そして病気になるような住宅はありえないことで、もっと健康に役立つ住宅でなければならない。

これに対してもきちんと対応している地場工務店がある。逆に健康増進させることを目的とした住宅をつくってもいる。

4、こだわりと売れること

 ただ気をつけなければならないことは、良い住宅が売れるわけではないこと、良い住宅会社が成長するのではないことである。

えてしてこだわりの良い住宅をつくる企業は、錯覚する場合が多い。

こだわりを追求していると楽しくもある。

しかし販売がおろそかであり、市場開拓力がない。宣伝や広報が弱い。
 

 

 逆にこだわりが販売に向いている企業がある。

商品は見栄えを良くし、価格的にもうまく購買欲に訴えている。

売ることと成長することが目的であり、施工など手間隙かかるものは適当な消化対応であり、品質や現場きれいなどにこだわらない。

充分な品質管理力がなくてもクレームさえ発生しなければよいとしている。

しかしこの企業が売れていたり成長したりしている。

不愉快なことであるが、これが現実であり、避けるわけにはいかない。


 良い住宅をつくる良い住宅会社に伸びてほしい。

売ることや、どうしたら売れるかについて真剣に取り組んでほしい。

住宅業界は過去恵まれた業界であったため、あまり真剣に考えたり、努力をしてきていない。

こだわりがあるが、つくることだけでは、やはり厳しい時代には通用しない。

営業のない会社はない。

しかし営業マンがいなくても受注の順調な会社もある。

ようはこだわりや特長をうまくユーザーにアピールして受注できるようにすることである。


 どんな不況のときでも順調な企業がある。

それは役立ちと売ることに真剣な会社である。

考え、検討し、工夫し、創造する企業である。地場工務店も売ること、売れることに思いをはせて、考え、工夫し、創造しなければならない。

しっかりユーザーを見据え、役立ちのこだわりと、コミュニケーションに力を入れることである。マーケットはある。そうすれば必ず道は開ける。

 

 



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