長井塾長の工務店応援記

利潤と道徳を調和させる

「論語と算盤」という言葉をご存知の方も多いでしょう。日本実業界の父とも

言われる渋沢栄一氏の代表的著作です。渋沢氏が活躍した明治時代は維新を経

て西洋文化が流入したことで、旧来の価値観が破壊されてしまいました。経済

界も混沌とした状況で、商道徳がおざなりとなり拝金主義がまかりとおる時代

でもあったようです。その中で、渋沢氏は論語を倫理観のベースとし、信用い

わば"心"の部分があらゆる経済活動の芯にあるべきで、それがなければ経済活

動は発展しないことを提唱し、以後の日本の躍進を根底から支える大きな役割

を担いました。

 

現代も、世の中全体が維新と同じように価値観の変革期に入ったように思われ

てなりません。2020年以降にはさらに厳しい世の中になることが容易に予想さ

れますし、特に住宅業界においてそれは顕著です。だからこそ改めて、企業の

持続的発展の鍵である"そろばん・算盤"="収益"と"論語"="倫理観・信用・心"

との両立がクローズアップされるのだと思います。そこには企業は収益を上げ

る責務があり、利益があればそれを社会に還元しなければならないという価値

観が根底にあります。それは、工務店ビジネスに置き換えるならば住まいづく

り事業を通じて地域社会にどう貢献していくか、ということであると思います。

「論語と算盤」の考え方に基づき、工務店ビジネスは再変革が求められていま

す。

 

 

企業の財産は人材

渋沢氏は、それと同時にマネジメント、教育事業に力を入れました。企業は人

なり。そして教育による人材育成を自ら実践されました。人材育成は難しい課

題でもありますが、企業の将来を左右する最重要課題であることは言うまでも

ありません。

 

今回クローズアップでも特集させていただいた福岡県の健康住宅株式会社樣は、

まさに"人"を大事にすることで大きな成果を生み出しておられました。企業理

念、社長の想いについて、社員全員が腑に落ちており、社員が進むべき方向に

迷いなく、燃えてチャレンジをし結果を出すことで会社に貢献をする。成果が

出ることでますますに自社に愛着とやりがいを持つ。いわば善の循環がうまく

機能しています。

 

今まで数多くの企業を視てきましたが、そのような企業を訪問した時、共通し

て心地良さを感じます。その心地よさを、同じようにお客様も敏感に感じ取ら

れているはずです。それが共感となり、信用を育み、結果として住まいづくり

のパートナーとして認めてくださることにつながるのでしょう。渋沢氏の提唱

された商売の根底にある"心"はこのようなところに現れていると思います。

 

そのような善の循環を構築するにはそれは社長自身が理念、想いを伝え続ける

ことが大事です。それも社員が腑に落ちるまで伝え続けること。朝礼や社長セ

ミナー、その他社員に伝える機会は様々です。徹底し続けること、それに尽き

るのではないでしょうか。

 

健康住宅株式会社樣では、厳しい時代でも持続的成長・永続を考えていかねば

ならない企業経営において、一つの理想が体現されていました。

 

時代が移り変わり、環境が変化し続けている中でも「論語と算盤」の精神は活

き続けています。"人"そして"心"の育成にぜひ積極的に取り組んでいただきた

いと思います。

 

そこに取り組むか否かが、将来の成果に大きく関わってくることでしょう。

 

  



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