日本では「お客様第一」という言葉に表れるように、CS(顧客満足)は昔から商売の基本といわれてきました。
言葉自体は古く1980年代ごろから使われるようになった概念で、今では多くの企業でそれを分析するためにCSアンケートを実施したりされていると思います。CSについて、そんなの当たり前にやっていると考えておられる工務店・ビルダー様も多いと思いますが、それにより成果が上がっているか、というと微妙なところもありそうです。
今回は、アフター・インサイドセールスシステムにおいて、一番重要な原理原則ともいえる、
「CS」の意味と目的、その成果について考えてみたいと思います。
CSには二つの意味がある
まず、「CS」には、二つの意味があることをご存じでしょうか。
一つは、カスタマーサティスファクション(顧客満足)であり、CSといえばまずこれが想起されると思います。
そして、もう一つのCSとは、カスタマーサービス(顧客対応)のことを言います。
図にも示しているように、CS(顧客満足)を満たすためには、CS(顧客対応)強化が必要不可欠である、
という関係にあります。
CS(カスタマーサービス=顧客対応)を徹底して磨いていく、それによりCS(カスタマーサティスファクション)の成果がもたらされ、それがレベルアップすることでCD(カスタマーディライト=顧客感動)、さらにはCT(カスタマートラスト=顧客信頼)にまで高められる、ということになります。
CDとは、例えると「大変満足!ここまで自分にしてくれるのか」と感激してもらえること。CTとはそれを超えて、例えると「自分だけでなく他人であっても同じようにしてくれる」と心から実感していただけるまでの状態です。
CSを行っている、と言ってもお客様は喜んでいるが、その先の紹介その他目に見えた成果が表れていない、という印象を持たれている場合、もしかしたら、まだこのCT(顧客信頼)を得ているとまで言えないのかもしれません。この、「自分だけでなく、他人であっても同じように」と信頼していただけている状態が、お客様に紹介や積極的な営業支援をしてくださるか否かの大きな境目となります。
誤解が無いよう気を付けてほしいポイント
では、工務店・ビルダーはどのようにしてCSを実現していくのか、という話をするうえで、誤解が無いよう気を付けていただきたいポイントが2点あります。
①商品力を上げる=CS向上できる ではない
商品を提供する(ニーズを満たす)行為そのものは、主に顧客の物的欲求を満たします。しかし、物的欲求が満たされただけでは、顧客は心からの満足を得ることができません。
顧客が心から満足する時、それは会社そして人との触れあいによって、自分にとっての心の奥底にある願望(ウォンツ)が引き出され、それが叶えられた、と実感した時です。これがCSの原点です。すなわち、工務店・ビルダーがCSを実現する(お客様が本当に満足される)ということは、「この会社、この人を通じて家を建てて本当によかった」と思っていただくことです。これにより初めて顧客の信頼を得ることができ、紹介などの次の展望が開けます。
商品力強化はもちろん重要です。ただし、商品力を上げればCSは向上できる、話は誤りであるということです。
②CS=尽くす ではない。
もう一つは、CSは過度に「尽くす」ことでは無い、ということです。お客様のためにと要望を全て聞き、過度に尽くし続け、それが結果的に経営にマイナスとなってしまっては本末転倒です。CSは、会社がプロ集団としてプロとしての提案をし、それにより相応の対価をいただき成長発展するためであり、もっと単純に言えば「儲ける」ために行う、ということです。
この目的が果たされにない限り、十分にCSを実現しているとはいえません。
すなわち、会社が成長発展するためにCSを実践しお客様の信頼を得る。それによって会社の評判を上げる、そして次の受注を取る、次の顧客を発生させる、といった成果を導く、とならねばなりません。
以上より、今後CSを実践していくにあたり、お客様の願望(ウォンツ)を引き出し満たすこと、それを企業全体で行えるようにしていくこと。そこを最優先に考えてください。それには何より「対応力」を磨くことが重要です。先ほどのCS(カスタマーサービス)を磨いていこうということになります。
そして、そのためにはただお客様に尽くす、ということでなく、適切に「対応力」発揮できる状態を作ることであり、顧客の信頼獲得を社員が全員で行える状態を築いていくことが大切です。
このためには、結局のところ業務の明確化、そして仕組み化であり、標準化が必要になるということになります。この考え方が、信頼構築を通じお客様に積極的な営業支援者になっていただくアフター・インサイドセールスシステムの勘所であり、最も重要な点であるともいえるでしょう。
CSを徹底し、会社に善の循環をもたらす
従業員にとって「自分がお客様の幸せに貢献している」、「世の中の環境を良くするために行っている」仕事に従事していることは、誇りと遣り甲斐、すなわち高いES(社員満足)に繋がっています。それは、より幸せなるお客様を増やすこと、すなわちCS(顧客満足)向上の源です。ESはCSを向上させます。さらに、CSが向上すれば自社の競争力が高まり、会社は必然的に成長発展していきます。すなわち「儲かる」からです。そして儲かる会社はさらにESを高めていく。
このサイクルが循環し続けること(善の循環)が企業発展の原動力となります。
このサイクルを回していくために、顧客対応力を向上する仕組みを築き常に磨き続け、CSをレベルアップさせる、それによってこの善の循環を導ける企業をぜひ皆さんも目指してください。
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