● 好評連載 お客様を呼ぶブランディング講座
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   ブランドコンセプトを設定する(前編)
前回までは、ブランディングを整理するために6W2Hで考えるとよいという話を
進めました。また、その中でもWhat(なにを)が最も中心的かつ重要な要素で
あると述べました。ブランディングは、“何をもって消費者(顧客)の心を動
かすのか”を決めること、つまりブランドコンセプトを決めることが不可欠で
す。そして、そのブランドコンセプトは、できるだけ他とは違い、尖っていて、
目立つことが大切です。コンセプトがありきたりで他社と同じでは、多くの情
報の中で埋没してしまい消費者の目に止まらないものになります。

例えばコーポレートブランドの場合、他と差別化されたブランドコンセプトを
導くための作業は自社の「強み(らしさ)」を知り、設定することから始まり
ます。その理由は、「強み(らしさ)」こそが、消費者の心を動かす要素にな
り得るからです。そして、その強みは現在のものではなく、今後行うブラン
ディングの対象となるこれから(未来)の強みを設定することが目的となりま
す。また、それを引き出すために、現在や過去の強みも知る必要があります。

会社の強みを分析するには、過去、現在、未来に対し強みと弱みを抽出すると
よいでしょう。強みを過去まで出すのは、それがこれから(未来)の強みに変
わる可能性があるからです。これは、例えば起業した当時は製材業だったとい
う歴史を未来の強みに変え、“木のプロ”というコンセプトを打ち出すといっ
たケースです。また、これまでの“弱み”を抽出するのも、それらが未来の強
みに変わる可能性があるからです。このケースとしては、千葉県の「いすみ鉄
道」がよい例です。いすみ鉄道は、何もない田舎を走るローカル線という弱み
を逆手に取り、“ここには、「なにもない」があります”とブランディングし、
日本の原風景を懐かしむ人たちにその魅力をアピールし成功を納めています。 こうして、過去、現在の強みと弱みから未来の強みを“設定”していきます。 この作業は、現在の強みを踏襲する場合もあるので“設定”としましたが、 “創造”と表現すべきくらいクリエイティブさが求められます。当然、会社の ビジョン、方針、戦略とも大きく関わってきます。この未来の強み(=ブラン ドコンセプト)をしっかり決められたら、ブランディングという山登りは5合 目まで到達したと考えてよいでしょう。逆に、これをおざなりにすると後の活 動がすべて無駄になるくらいこの作業は大切です。次回は、未来の強みの設定 の仕方をさらに詳しく解説していきます。