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● クローズアップ

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   11月の月例研究会「体験型施設とICT研究」報告

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11月の月例研究会は、㈱新和建設様の拠点の一つである「木美の杜」へ訪問し

「体験型施設とICT研究」の2点をテーマに開催いたしました。

 

〇木美の杜体験型施設の視察

 

新和建設様の木美の杜では、モデルハウスで技術の粋を集めた「魅せる」モデ

ルとパネルによる展示を、体験館では、模型や実際の体験装置により性能を実

感でき、さらにVR技術などを交えることで自社の特長を五感で理解できるよう

な工夫が凝らされていました。

体験施設は素晴らしいものでしたが、新和建設様ではその一方で「性能を語り

すぎることを避ける」ことも大切にしておられます。性能やそれを金銭的メリ

ットとして謳うのは、いわばメーカーの強みであり、相手の土俵で戦うことに

もつながりかねません。共感していただくのはあくまで「木と技と心」。「性

能面については、当たり前にできますよ」とさりげなく伝える方を重視してお

られます

 

〇 業務の標準化と活用するICT

 

新和建設様といえば大工の育成システムと共に、徹底しきった業務の標準化と

IT化推進の最先端企業として全国にも名を轟かせておられます。

 

前半では、そのキーマンである常務取締役の藤井徹氏に最近の実践内容を発表

いただきました。

すでに長年、完全な図面と仕様による社内外への引継ぎを徹底実践と事前発注

100%は現在も徹底しておられますが、今でもその精度をさらに高める努力を

続け、勤怠管理分野のIT化を促進するなど、働き方改革への対応を踏まえた対

策を急ピッチで進めておられることや、集客に関し事前予約システムを中心に

したウェブ集客戦略の見直しを図るなど、現状に満足せず進化し続けておられ

る内容をご発表いただきました。

 

後半では、現在新和建設様の取り組みを参考にされながら業務改革を急ピッチ

で進めておられる健康住宅㈱畑中勇一郎様にもご登壇いただき、その立場を踏

まえ、「業務の標準化と活用するICT」に関する談義を行いました。

 

その中で重要であったキーワードは3点ありました。

 

まず最初に、IT化がうまく機能する条件として業務の標準化が必須である、と

いう点です。ITは構築された業務をより円滑に進めるためのツールであり、主

従が逆転してしまうとうまくいきません。その業務の標準化について、押さえ

ておくべきコツは、常に見直しを図ることです。標準化を進めるうえでマニュ

アルが必須であるところ、例えば新和建設様では月2回は標準化の見直しを行

っておられ、組織図は今まで300回以上マニュアル改定してきたとのこと。こ

れを踏まえ、分業とやるべきことが極限まで明確になり単純化し、人により認

識の差が出ないようになっています。単純化・標準化された業務にはITもうま

く乗っていくことができ、その機能を最大限に発揮することができます。単純

化・標準化された業務について例外を許さないことも重要です。業務フローを

徹底して守らせ、例外が許される環境にしないのはもちろんですが、一方で、

守ることができるようにフォローアップの体制もなければなりません。それら

が果たされずに複雑で例外だらけの業務をそのままIT化しようとすれば、煩雑

になり費用も多額になってしまうでしょう。

 

次に、IT化がなかなか進まないのにはそれなりの原因があり、その原因に対策

を打つことが必要です。できない理由は主に知識不足があり、それには教育が

必要ですし、経験不足には訓練が必要。やる気があってもやらない理由の多く

に時間不足があり、それには分業の徹底が対策として考えられます。その点、

自社の課題を分析し課題を明らかにすることが大切です。

 

さらに、IT化の推進についてはリーダーが率先することです。新和建設様は経

営陣・リーダーが率先し落とし込みを行っており、それがIT化の浸透する秘訣

の一つとなっています。畑中氏からも、社員任せになり放任せずに、社長がト

ップダウンで伝える事も必要であり、それがIT化推進の原動力になるというお

話もありました。

 

来年には働き方改革関連法案が施行されます。そうでなくとも近年の人材難は

深刻です。その対策として、業務の標準化とIT化の推進は、それらを解決する

ための道筋として避けて通れないテーマともいえるでしょう。業務を極力単純

にし例外を作らない、進まない原因に対応した対策を打つこと、そしてIT化の

推進にはリーダーの率先が必要不可欠であることが大きなカギとなることを踏

まえ、ぜひ業務の見直しを全社的に進めていただきたいと思います。

 

                (文責:住宅産業塾事務局長 長井智史)