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完成した図面と完全な仕様書(設計図書)による引継ぎを

①重要な完成設計図書。

設計部門で絶対やらなければならないのが完成した図面と完全な仕様書(設計図書)の作成である。

そしてそれを着工前に確実に工事部門に引継ぎをし、事前発注ができるようにしなければならない。

日本中の工務店・ビルダーではほとんどこれができていない。

 

図面が不完全、仕様が未確定で、どうして良い工事ができるのか不思議なことである。

施工計画が組めないし、当然工程計画も組めず、原価計画も組めない。

そのため現場の行き違いが発生し,現場監督はてんてこ舞いになる。

資材の手配が遅れたり、現場の大工・職人には怒鳴られたり、至急のため資材運搬係みたいにデリバリーをさせられる。現場監督が現場監督でなくなる可哀想な現象を招く。

 

このため工程管理も原価管理もできず、さらに悪いことであるが品質管理もできなくなる。

現場監督や大工・職人の仕事がスムーズにできなくしているのは、すべてこの完成した図面と完全な仕様書が着工前にできていないことによるものであることを強く認識してほしい。

そして現場監督の権威を落としているのも、すべてここにあることを理解してほしい。

 

②CSも生産性も利益も低下する

あまり問題にされていないが、現場の生産性を落としているのも、この図面と仕様書ができていないことに起因していることを認識する必要がある。

現場で現場監督と大工・職人が打合せをしている光景をよく見るが、これは一見すると、よく打合せをしており良いことだと錯覚するが、とんでもないことである。

職人・大工の仕事の実働時間を奪い、監督がやらなくてもよい作業をしているため夜遅くまで勤務したり、現場監督の人数が多く必要になる愚かな行為であることに気がつかなければならない。

完成した図面と完全な仕様書があれば無駄な打合せの時間が少なくなるのに残念である。

 

また、このことにより原価率が高くなり、利益率も低くなる。

工務店は粗利益率が25%を切っているところが多いが、すべてここに起因していると断言してもよい。完成した図面と完全な仕様書ができないことにより事前発注もできない。

これにより発注原価が確定しないし、竣工引渡し後の実績原価も甚だしく差異(違算)が出る。

事前発注ができれば、コストダウンをしなくても簡単に2~5%原価は下がり利益率は向上する(決して売価は上がらない)。

工務店といえども25%以上の粗利益(できれば30%)を出さねばならない。そうでないと満足なアフターサービスも社員の福利厚生もできない。

 


③完成を決意すること

なぜ完成した図面と完全な仕様書ができないのか、それも着工前に完了し、工事部門に責任を持って引き継がなければならないのにどうしてできないのかを深く考え、必ず改善する必要がある。

この改善をせず、これからの厳しい本格的強存強栄・淘汰の時代に勝ち残ることはできない。

 

この完成設計図書ができない理由は経営幹部の認識不足、設計部門の認識不足と力量不足、人数の絶対的不足が大きな原因であるといえる。

忙しいからやむをえない、一生懸命しているのだから仕方がないという言い訳がある。

それと住宅業界の悪弊とも言うべき「こんなもんだ」という認識レベルの低さなどにもよる。

 

工事監督も現実として完成した図面と完全な仕様書がないことを仕方がないことだと思って仕事をしているし、現場ではそんな悪条件でもやりこなすことが現場監督の使命だと思っている。

素晴らしいことではあるが、これではお客様満足の家はできないし、生産性も向上しない。

 

住宅会社としてビジネスシステム(仕組み)ができていないことから、営業で決めるべきことが中途半端で、設計でもやるべきことが不完全な状態で、次の工事部門に垂れ流されていくのであるから、努力の割に成果が低い。

 

これからは絶対に完成した図面と完全な仕様書を作成し、期限内に工事部に引き継ぐようにしてほしい。必ず決意し、実現してほしい。

 

これが期限内にできれば経営が大幅に変わる。

生産性も利益もCSも高くなる。

また現場監督の労働時間の大幅短縮ができ、働き方改革につながる。

(2019年2月 25日 日本住宅新聞掲載)