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CSと利益の両立を

NHKの大河ドラマ「青天を衝け」が参考になる。日本の資本主義の父と言われている渋沢栄一氏の物語である。丁度今回お伝えしたいテーマのシーンが放送されたところである。氏が提唱されている「論語と算盤」を強く意識され公益的な企業の在り方を求められていくくだりである。儲け、利益追求が中心になりがちな企業運営の中で、まず真の役立ちができてこそだと訴え、いろいろな企業設立に邁進され、また今でいう福祉事業にも積極的に取り組まれた事実。もううなるしかない感動ものである。

 

現実の世界ではどうかというと、情けないくらい「算盤と算盤」の世界になっていると言わざるを得ない。

 

今は資本主義の中でも金融資本主義の時代になり、貧富の差が極めて大きくなり、これからの未来に暗雲を立ちこもらせている。その反省から公益資本主義の時代にしなければならないという動きが起こってきている。株主だけでなく、従業員や、購入される方々や、関係する人々、社会が幸せにならなければならないという考え方である。

 

前号で触れた欠陥住宅8割が、どうかといえばまさしく利益第一主義で許されない行為であるということがわかる。社会も業績が良いというだけで評価していることが多いが、欠陥住宅をつくって儲けている企業であるということを忘れてはならない。犯罪に近い住宅づくりで業績が良いというのはまさしく倫理観欠如の「算盤と算盤」である。

 

住宅は求められるユーザーにとって「生命を担保にして求められる家族の幸福の城である」ことを忘れてはならない。材料と家が喜ばない住宅をつくって、住まう人が喜ぶはずがない。まして欠陥住宅だと分かったらどれだけ失望されるか、胸が痛くなる。

 

家をつくって病気になるのもいかがなものかと思う。アメリカの最新の動きの中で「ヘルシービルディング」という考え方が提唱されてきている。きれいな空気でないと健康になれない、住宅やオフィスの中の空気をきれいにすることが健康促進につながり、生産性向上をもたらすことができ、働き方改革につながるというものである。空間の中でのVOC問題はほとんど解決されていないという研究・分析の結果の提唱である。今までのグリーンビルディングから一歩前進しての動きである。注目していく必要がある。

 

住宅ビジネスは①感動実現ビジネスであり、②サービスビジネスであり、③システムビジネスであり、④ベンチマーキングビジネスである。そのためにはCS実現が基本になっている。しかし真のCSを理解している企業は少ない。CXという概念が話題になっているが、CSの意味が分からない限り、小手先の概念でしかない。

 

CSには二つがある。カスタマーサービスのCSと、それを実現しての顧客満足のCSがある。この顧客満足のCSに三種類がある。CS(満足)→CD(感動)→CT(信頼)である。熱烈なファン(シンパ→アンバサダー)をつくるためにはCD・CT実現が必須である。営業・設計・工事がチームになり、全社で真剣に取り組み、CS 実現を図ることが重要で、「この会社なら、この担当なら任せても大丈夫という信頼」というお墨付きがもらえるようにすることである。この信頼がない限り顧客からの紹介はない。紹介がもらえるように「商品・実務対応・心の対応」の強化を図るべきである。

 

カスタマーサービスという、やることを明確にして、徹底してやるCS概念が特に重要である。現場美化などをまとめた「現場スタンダード」や「現場立ち合い説明確認」、設計での敷地環境調査」、「ご要望確認」、「プレゼンルール」、営業での「もてなし・接客ルール」など多々ある。これらは会社の背骨になる業務フローと業務内容に基づいた行動原則であり、明確に文章化され、その実行を確実化するためのトレーニング方法がルール化されているものである。

 

カスタマーサービス内容が明確にされ、その実行が確実に徹底されることで、真の顧客満足のCS実現ができる。この時に注意しなければいけないことがある。やることの明確化は当然だが、絶対にやってはいけないことも明確にすべきである。決めたカスタマーサービス内容を徹底実践することで、顧客のCS・CD・CTが実現できることを肝に銘じてほしい。


このCS実現のために注意することがある。

商品良し、ビジネス実務対応も良しだが、お客様に迷惑をかけること、不信に思わせること、惑わせること、不愉快にさせることがあれば一巻の終わりである。心の対応、接客での気持ち良い安心対応ができることが最も必要である。感情を損ねると満足を得ることはできないどころか、クレームになることが多い。お客様との会話や対応をもてなしの心で気持ちよく対応ができるようマインド・マナー教育にも力を入れるべきである。

 

 

やることをやる、心からのふれあいをやれば、お客様は満足・感動・信頼し、シンパ、さらに熱烈なフアン、アンバサダーになっていただける。魅せる現場をつくればブランドになり、受注に大きく貢献する。まさしくCSと利益の両立ができるのである。CSをやってもうからないのでは意味がなく、必ず受注・売上・利益貢献につながるように工夫していくことが大切である。

(2021年11月 25日 日本住宅新聞掲載)